子どもの運動器疾患について

“運動器”とは少し耳慣れない言葉と感じる方も多いと思います。食べ物の消化、吸収に関わる胃腸や肝臓、すい臓などの臓器を消化器と表現するのと同じく、立つ・歩く。走るなど移動や体の動きに関わる臓器(骨、関節、筋肉、腱、靭帯、神経など)のことを運動器と表現します。整形外科は運動器のトラブルに対処することを目的とした医学ですが、ここでは小児の運動器疾患について簡単に解説いたします。

これって成長痛?子どもがあしの痛みを訴えたときの対処法

成長期のお子さんは、しばしば思い当たる原因もなく体の痛みを訴えることがありますが、主には下肢の痛みとして生じることが多いようです。多くは心配のない良性の痛みですが、稀に放置してはいけない病気が潜んでいることもあり、はっきりさせるためには整形外科にかかるのが確実と思われます。どのような場合に医療機関へかかるべきかを家庭で判断いただくポイントについて、以前びわ湖放送の番組「いきいき健康ライフ」でお話させて頂く機会がありましたので興味をお持ちの方は下記をご参照ください。

子どもに起こる骨格の異常が証明されないあしの痛みは、“成長痛”と表現されています。当初、私はこの言葉が正式な医学用語ではないと思っていて、あしの痛みを訴えて受診されるお子さんのご家族に心配がないことを説明するための便利なツールぐらいにしか考えておりませんでした。しかし英語圏の医学書にも“Growing Pain”(まさに“成長痛”です!)という表現が用いられており、実は正式な医学用語であることを知ったのは恥ずかしながら医者になって随分経ってからです。洋の東西を問わず、成長痛という症状は認知されているようです。
子どもが突然あしの痛みを訴えて泣き出したとき、親御さんは途方に暮れるでしょうし、何か心配な病気に違いないと思われても不思議はありません。そこで、成長痛の特徴を以下に挙げさせていただきました。急いで病院に行くべきか、そうでないかの判断は大体できると思います。

  • 発熱などの全身症状がなく、あしが痛いことを除くと元気である
  • 痛みの持続時間が短い(さすってあげると自然におさまる、通常1時間以内)
  • 痛みの部位が一定しない(左右が定まらない、毎回訴えの部位が変わるなど)
  • 午後や夜に痛むことが多く、昼間は元気に走り回っている

これらの特徴が揃っていれば、心配な病気である可能性はかなり低いので成長痛と考えてまず問題ないですが、もしこの条件がまったく当てはまらなければ早めに医師の診察を受けていただくことをお勧めします。

赤ちゃんの股関節脱臼

乳児期の股関節脱臼は、新生児期、1ヶ月、4ヶ月などの検診で小児科医や保健師のチェックを受け、もし脱臼の疑いがあれば小児専門病院へ紹介されて精密検査を受けていただく流れが一般的です。他府県でもそうですが、滋賀県には小児整形外科の専門施設が一つしかないため、検診で脱臼を疑われた際に、居住地によっては遠路を半日かけて受診することになり、赤ちゃんとご家族にとっては相当なご負担となります。
検診で脱臼の疑いを指摘された方や、家族内に股関節脱臼の方がいる(遺伝的素因がある)、強い向きぐせや足の動きの左右差など、気になることがあれば詳しく調べておく必要があります。当院では、人体に無害で短時間に終わる超音波検査も併用した診断を行っており、必要に応じて専門病院と連携してスムーズに治療を受けていただける体制をとっております。
赤ちゃんの股関節脱臼は、育児をする上で幾つかの注意点を守っていただくことである程度予防できることが知られています。股関節脱臼を予防する育児上のポイントや、育児グッズの選び方などについてもアドバイスさせていただきます。

スポーツによる骨格のトラブル

近年、小児期からスポーツ活動が盛んに行われていますが、それに伴って骨格の不調を訴えるお子さんも増えているようです。私が小児病院に勤めていた頃にもスポーツによるトラブルを抱えたお子さんの治療に関わってきましたが、中にはかなりレベルの高い選手もおられて、治療方針や復帰の時期について難しい判断を迫られることも多々ありました。
小児の骨格は未熟で軟骨成分が多いため、成人と比較すると外力に対して脆い傾向があります。また、体の使い方や筋力の未発達など様々な要素が関与することで骨格のトラブルを生じ、スポーツ障害に至ります。
スポーツ障害で頻度の高いものを列挙しますと、投球肩(リトルリーグショルダー)、野球肘、疲労骨折(足、脛など)、腰椎分離症、筋断裂(肉ばなれ)、靭帯損傷(膝や足首)、半月板損傷、離断性骨軟骨炎、足の問題(シーバー病、扁平足など)などがあり、それぞれの病状やスポーツの種類、レベルに応じてドクターストップの要否、体を休める期間や治療内容を決める必要があります。学童期から思春期にかけて、特に女子に多い膝のトラブルとして、半月板のサイズが通常より大きい“円板状半月板”が原因であることが少なくありません。円板状半月板は、欧米人では比較的稀ですが、日本人を含めたアジア人に多いため、この疾患に関する医学論文はアジアから出ているものが圧倒的に多いようです。当院では、スポーツ障害の診断・治療だけでなく、復帰への支援や故障の予防についてスポーツ指導を得意とする理学療法士からもアドバイスさせていただいておりますので気軽にご相談ください。

小児期の股関節疾患について

【図-1】小児股関節疾患の好発年齢

【図-1】小児股関節疾患の好発年齢

乳幼児期から学童期にかけては股関節の異常に由来する訴えがしばしばみられます。多くは単純性股関節炎と呼ばれる一過性の関節炎ですが、中には化膿性股関節炎、ペルテス病、大腿骨頭すべり症といった、小児期特有の稀な股関節疾患もみられます。これらの疾患は、頻度が低いこともあり見落しや診断の遅れがしばしば問題となります。診断が遅れやすい理由の一つとして股関節の病気であるのに、患者さんは患部から離れた膝や太ももに痛みを訴えるため、膝の疾患と間違われてしまうことです。当院では、このように稀な疾患であっても確実に診断し、必要であれば迅速に専門病院で治療を受けていただけるような体制をとっております。
小児期にみられる代表的な股関節疾患とその好発年齢を【図-1】に示しました。
頻度は、単純性股関節炎が圧倒的に多く、化膿性股関節炎(細菌が股関節内で繁殖して化膿する病気)は近年ヒブワクチンが普及したこともあり減少しています。

【図-2】6歳男児 成長痛と間違われて診断が遅れた右ペルテス病

【図-2】6歳男児
成長痛と間違われて診断が遅れた右ペルテス病

ペルテス病【図-2】や大腿骨頭すべり症は、成長痛やスポーツによる膝の故障と勘違いされて診断が遅れ、患者さんが大迷惑することになりかねない疾患です。しかし、ほとんどの場合MRIなどの高度機器を用いるまでもなく、簡単な問診、診察と単純エックス線撮影や超音波検査を用いれば診断可能です。

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