胃がん大腸がん検診を受けましょう。

【図-1】部位別にみた癌死亡率の年次推移

【図-1】部位別にみた癌死亡率の年次推移

胃がん・大腸がんは日本人のがん死亡率の中でも上位を占めています【図-1】。特に大腸がんは増加傾向を示しており、2015年の推定がん罹患率では男女とも大腸がんは1位であり、胃がんは男女ともに3位と予測されています【表-2】。従がって皆さんは2つのがんのどちらかに、生涯かかる可能性が高いといえます。しかし、心配しないでください。胃がん・大腸がんで死なないための4か条を守れば大丈夫です。

【表-2】2015年の推計癌罹患率

順位/性別 男性 女性
1位 大腸がん 20.9% 大腸がん 23.1%
2位 肺がん 18.2% 乳がん 14.3%
3位 胃がん 17.3% 胃がん 12.9%
資料:北川貴子、津熊秀明、他:日本のがん患者の将来予測。
富永祐民他(編)がん統計白書、篠原出版、東京、1999.

胃がん・大腸がんで死なない4か条

①予防を心がけましょう。

②胃がん・大腸がん検診を受けましょう。

③早期発見・早期治療が重要です。胃・大腸がん検診で要精査となった場合は、必ず内視鏡による精密検査を受けましょう。

④検診によるがんリスクを活用した経過観察が重要です。

①予防を心がけましょう。

【表-3】に胃がん・大腸がんの危険要因と予防要因を記載しました。これらをまとめると煙草をやめることは言うまでもありませんが、野菜と果物をたくさん食べることが予防には大切です(野菜・果物の摂取量は一日400gが推奨されています)。また動物性脂肪は大腸がんの確実な危険要因ですので、豚牛羊肉を適量にします(摂取の目安は1日80グラム)。そして豚肉・牛肉1に対して魚(特に青魚)2を基本に考えましょう。塩分は胃がんの危険因子です。塩蔵品・高塩分食品の摂取はなるべく控えましょう。その他の生活習慣として、運動が大腸がんの予防要因となりますので、毎日少しずつでも運動をしましょう。このように、生活習慣と胃・大腸がんは結びつきが強いのですが、予防の効果は長期間の積み重ねで出るものです。今までの生活習慣で蓄積された危険要因が予防により直ちに打ち消されるものではありませんが、生活習慣を変えることで少しずつがんになりにくい体質に変えていきましょう。また、胃・大腸がんの予防はご覧になってわかるように糖尿病や高血圧など他の生活習慣病の予防にもなり、総合的な健康体づくりに繋がります。

【表-3】生活習慣病としての胃・大腸がん

胃がん 危険要因 予防要因
確実 喫煙 野菜(アリウム)
果物
可能性大 塩分 緑茶(女性)
運動(女性)
大腸がん 危険要因 予防要因
確実 動物性脂肪
飲酒
肥満(男性)
食物繊維
運動
可能性大 喫煙 青魚(ω3脂肪酸)
牛乳・カルシウム

①胃がん・大腸がん検診を受けましょう。

【図-5】がん部位別5年生存率

【図-5】がん部位別5年生存率

次に、胃がん・大腸がんの予防を行っても胃・大腸がんになった場合はどうなるのでしょう。絶望的なのでしょうか?いいえ、安心してください。胃がんも大腸がんも、他部位がんと比べると治りやすいがんとされており、適切な時期に発見できれば治る病気なのです。一般に手術後5年たてばがんは治ったといわれますが、【図-5・図-6】に示すように目安である5年後の生存率は胃・大腸がんにおいて他部位のがんに比べてかなりいいことがお分かりいただけると思います。
【図-6】発見経緯と5年生存率

【図-6】発見経緯と5年生存率


【図-7】胃がんのリスク要因

【図-7】胃がんのリスク要因

また、胃がんも大腸がんも、検診により死亡率が低下することが証明されているがんです。そこで第2か条は“検診で胃がん・大腸がんを発見しましょう”ということです。大津市では胃がん検診として以前より胃バリウム検診を行っています。しかし、受診率が低く十分に検診の効果を発揮しているとは言えないのが現状です。そこで24年10月からは胃バリウム検診に加えて、胃がんリスク検診が開始されました。胃がんリスク検診【図-7】とは、血液検査でピロリ菌感染と萎縮性胃炎の程度を評価し、胃がんになる危険度を簡便に判定するものです(がんを直接発見するものではありません)。

【図-8】胃がんリスク検診(ABC検診)

【図-8】胃がんリスク検診(ABC検診)

ピロリ菌感染と萎縮性胃炎の程度により、胃がんになる危険度をABCDの4群に分類します【図-8】、大津市ではC+D群を胃がん高度危険群としてC群にまとめています)。

【図-9】大津市の胃がんリスク検診

【図-9】大津市の胃がんリスク検診

A群のひとはピロリ菌感染がなく胃がんになる可能性はほとんどありませんが【図-9】、逆にC群(C+D群)の人は胃がんの危険性が高く毎年の胃内視鏡検査を受ける必要があるとされています。また、ピロリ菌感染があると検診で判った方は、保険でピロリ菌の除菌治療が受けられます。方法は1週間3種t類の飲み薬で治療するだけの比較的簡単なものです。最近の研究でピロリ菌の除菌により胃がんになる確率が1/3程度に低下することが分かっているので、胃がんの予防につながるものです。大腸がん検診は、便潜血反応(便に混じっている血液の有無をみる検査)でこちらも難しくないものです。

【図-10】厚労省のデータ

【図-10】厚労省のデータ

【図-10】の厚労省のデーターでは40~50歳代の4万人を対象にした13年間に及ぶ追跡研究では、便潜血反応検査を毎年受けた人は、受けていない人より早期大腸がんで発見される確率を高めて(緑丸)、大腸がんの死亡リスクを7割も減らしたという結果が出ています(赤丸)。簡便であり、有効性の高い検診ですので、大腸がんが増えてくる40歳以上の年齢の方は症状がなくても毎年大腸がん検診を受けるようにしましょう。

③早期発見・早期治療が重要です。

胃・大腸がん検診で要精査となった場合は、直ちに内視鏡による精密検査を受けましょう。
検診で精密検査が必要と判定された場合に、精密検査を受けていない方はどれぐらいいるのでしょう。大津市のデーターでは胃がん検診では約10%、大腸がん検診では約30%の方が精密検査を受けておられません。精密検査を受けられないのは一部の方ですが、せっかくの検診結果を活かされていないのは残念なことです。精密検査としては、胃も大腸も内視鏡検査が必須ですが、ついつい内視鏡検査がつらいからと思い避けられているのかもしれません。しかし、胃がんも、大腸がんも内視鏡検査の精度を上回る精密検査はありません。そのため、我々も少しでも多くの方に楽に検査が受けられるよう工夫を行い、精密検査受診率向上の努力をしています。例えば、胃内視鏡は非常に細い内視鏡が開発されています。この内視鏡を鼻から入れることで嘔吐反射(おぇーとなること)がほとんどなくなり楽に受けられます。

【図-11】大腸内視鏡検査は苦しい?

【図-11】大腸内視鏡検査は苦しい?

また、鎮静剤を使用し“ウトウト”した状態での検査であれば口からの内視鏡でも全く苦痛なく受けてもらえます。大腸内視鏡は腸を大きく屈曲させて入れていく“ループ挿入法”が主流でしたが、この挿入法では、膨満感や痛みが強いく大腸カメラはしんどい検査という評判ができてしまいました。当院では屈曲を作らないで内視鏡を奥に進めていく“軸保持短縮法”で検査を行っているため痛みはほとんどありません【図-11】。

また、内視鏡の性能の進歩も著しいものがあります。拡大内使用や狭域帯光などの技術の進歩で今まで発見の難しかった超早期がんを発見できることも多くなってきました。この超早期がんを“粘膜内がん”といいますが、胃も大腸もこの段階で発見すればほぼ100%治ります。さらにほとんどの粘膜内癌は、お腹を切らなくても口からの内視鏡で切除できるのです【図-12】。

【図-13】内視鏡的粘膜下層剥離術

【図-13】内視鏡的粘膜下層剥離術

【図-13】は私が粘膜内がんに対して行っている内視鏡治療でESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の写真です。この方法は、病変周囲にマーキングをして、特殊な電気メスで、その外側を全周切開後に腫瘍の底面(粘膜下層)を剥離して切除する方法です。この方法は、粘膜内がんであれば大きさは無関係で切除できることが特徴です。

【図-14】

【図-14】

【図-14】では直腸の粘膜内がんを切除した症例を提示しています。手術で切除すれば人工肛門を造らないといけない場所にできた主要でした。腫瘍もΦ42×87㎜と大きなものでしたが、ESDにより人工肛門になることなく切除できました。その他の症例をまとめたものをホームページに掲載しております。

http://shigabyouin.jp/shinryouka/02/file/201007shoukaki_vol3.pdf

④検診結果によるリスクに応じた経過観察が重要です。

【図-15】胃がん検診後の経過観察 (胃がんリスク検診の結果による)

【図-15】 胃がん検診後の経過観察
(胃がんリスク検診の結果による)

精密検査でがんがみつからなくても、それで終わりではありません。検診は毎年続けることで、はじめてがん死亡率を低下させる効果が認められるものなのです。また、検診の結果により個人のがん危険度の評価ができることもありますので、危険度が高い人は検診を受けずに最初から精密検査である内視鏡検査を受けて下さい。例えば、前述の胃がんリスク検診でB群(胃がん中危険度)であれば2-3年毎の内視鏡検査、C群(胃がん高危険度)と判定された場合、毎年内視鏡検査を受けることが推奨されます【図-15】。

【図-16】大腸精査後の経過観察

【図-16】大腸精査後の経過観察

また、リスク検診の対象年齢から外れる方でも、通常の内視鏡検査である程度の胃がんのリスクは評価できますので、内視鏡検査を受けたことのある方は、担当医に相談されるのもいいと思います。また、大腸がん検診で良性のポリープが発見された場合、胃がんリスク検診のようには決まった指針はありませんが、現在日本独自の適切な経過観察法を決める研究が進行中です。【図-16】は現在までの報告を参考にして作成した当院の大腸ポリープ切除後の経過観察指針です。便潜血が陽性で内視鏡検査を受けた場合、大腸がんがなくてもポリープがみつかれば通常は内視鏡で切除します。大腸ポリープはほとんどが大腸がんに変わる性質があるからです(時にポリープ内に既にがんが潜んでいるのがみつかることもあります)。従がってポリープが多くある人は大腸がんのリスクが高い人といえます。大腸ポリープが発見され切除された方は、1年目には便潜血検査は受けないで内視鏡を受け、大腸内にポリープが認められなくなるまで毎年続けることが推奨されます。このようにポリープのない腸になることをクリーンコロン(きれいな大腸)といい、大腸ポリープ治療の目標とされています。

最後に

この4か条を守っていただければ、胃がん・大腸がんで死ぬ心配はないとお約束できます。また、実際に内視鏡による精密検査が必要と言われた方で心配なことがある方は是非相談してください。

子どもの運動器疾患について 胃大腸がんで死なないための4か条 消化器内視鏡・胃内バルーン・こどもの整形外科ガイド

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